2018年12月25日火曜日

独自のスタイルを確立したNike Air Jordan 11は永遠に不滅です


正式名称は、NIKE AIR JORDAN 11 RETRO LOW(infrared 23)です。

昔見ていた池袋ウエストゲートパークという宮藤官九郎脚本のドラマの中で見て、「欲しい!」となってから、20年近くにわたってチョコチョコ買い続けているAir Jordan 11。 95年にマイケル・ジョーダンがシカゴ・ブルズでNBA優勝した際に履いていたデザインがこのAir Jordan 11で、Air Jordanシリーズでも最も人気のあるラインナップです。 カラーリングも様々発売されていますが、こちらはブラックにまとめた本体に対して、ホワイトのソールを敷いてモノトーンのおとなし目にまとめていますが、差し色的な感じでレッドを混ぜており、カラーネームとしては「infrared 23」となっています。
おそらく最も人気があるカラーは、ブラック×ホワイトの通称:Concord(コンコード:調和)です。 やはり、ハイカットの方が人気がありますが、AJ11のlowはあまりカットの低さが目立ちません。 もちろん比べれば分かるんですが、lowでも十分に高いカットを持っています。
おかげで左右外側のカバー部分(トップ部分)にくるぶしが当たってが痛いです(この痛みは10回くらい履かないと治りません)。 AJ11の人気の秘密は、とにかくデザイン性の高さです。
シルエットはそれほどスリムではないですし、極端な先細でもありません。
※但し、生地が厚いので内部はそこそこ狭いです(よく「NIKEは狭いので1サイズ上のサイズを!」と言いますが、1.5サイズくらい上の方が良いかもしれません)。
国産スニーカーやイタリア製のスニーカーに見かける、スリムに仕上げて購入前の物欲をそそるという手法をNIKEは採用していません。 あくまでも「履いた時」「履いて動いている時」に如何にスタイリッシュに魅せるか、を追求しています。 特にサイドビューの土踏まずのえぐり方はエゲツないくらいの色気を感じます。
もちろん、外側にも一切隙がありません。
デザイン的な特徴の一つが、ソール近くを通って全周しているパテントレザー(人工皮革)です。
黒光りするパテントレザーが全体的に精悍なイメージを形成している要因の一つであることは間違いないですね。

バックにはJordanの背番号23とJumpmanが刺繍されており、ヒール周辺のセメントパターンに上手く溶け込んでいます。

アウトソールは半透明の樹脂製で、ここにもレッドが見えています。このレッドを見る限り、「infrared」を意訳すると「燃え盛る隠れた熱い血潮」みたいな感じなのかもしれません。
個人的には誰にも見えないのに、Jumpmanがあしらわれているこのソールが大好きです。
全体的にブラックが面積を占めているので、コーディネートの手法としては濃色系のパンツや色落ち前のデニムに合わせると間違いないと思います。
AJ11はそこそこ幅があるスニーカーですが、下半身全体的に濃いめの色調で統一すると、幅広な足元はそれほど悪目立ちすることなく整ってくると思います。

肝心の履き心地は、New Balanceなんかに比べるとそれほど良くありません。
通常歩行時に歩きやすさを感じることは皆無ですし、ソールの柔らかさを感じることもありません。
ただ、バスケットシューズなので、快適性を求める方が間違っています。
立ち上がった時や急な方向転換の際に感じる動きやすさに魅力を感じてあげましょう。

様々なカラーリングを増やしながら、大きなモデルチェンジを行わずに市場で生き残り続けているAir Jordan 11ですが、個人的には基本カラーバリエーションを維持したまま、永遠に生産し続けて欲しいアイテムです。



2018年12月20日木曜日

MoorerのMorrisは気品溢れる存在

イタリアのVeronaで生まれたMoorerは、ダウンアウター業界に旋風を巻き起こし、欧米や日本で瞬く間にプレゼンスを向上させました。
個人的には、10年くらい前からイタリアを初めヨーロッパを旅行した際には必ず現物をチェックしてチョコチョコ集めていましたが、今年になって銀座に直営店がオープンしたり急に日本でも注目され始めました。 Moorerの中でも、なぜか日本ではあまり注目されないMorrisをご紹介します。



Moorerの商品名には、モデル名の後に外側の素材を表した文字が入ります。 KM:ポリエステル LL:ウール&カシミア みたいな感じです。 こちらのMorrisは、「L」と一文字ですが、ウール&カシミアです。 ご存知の方も多いと思いますが、このウール%カシミアは、かのLoro Piana社謹製の生地で風雨に強い高密度なものに仕上がっています(いわゆるStorm Systemですね)。
色はBlu(ダークネイビー)で、Nero(ブラック)とどちらにするか相当迷ったのですが、結局Bluにして良かったと感じています。 日本ではSIROが人気のようですが、SIROの丈を長くしたのがこちらのMorrisです。 前述の通りSIROに比べれば注目度が低いMorrisですが、ヨーロッパ(特にイタリアとロシア)では断然Morrisの方が人気が高いそうです。 価格差は(若干Morrisの方が高いですが)それほどありません。 Webに掲載されていたMoorerのexecutiveの話では、気温差と気品に対する考え方の違いの2点を日本とヨーロッパの売れ筋の違いの理由と分析していました。 つまり、(北海道を除く)日本より気温が低いヨーロッパでは丈が長い方が好まれ、丈が短いSIROはコートというよりジャケットなので、防寒用として着用するにはフォーマル意識の高い欧州人にはフィットしない、という話でした。 一理ある気もしますが、私はもっと簡単に、Morrisの存在があまり知られていない、ということでは?と考えています。 デザインや機能的には完成された感のあるアイテムですが、いくつか特徴をあげてみたいと思います。
■縦長のキルティングで細身アレンジ シルエットは全体的に細身に仕上がっています。他にもいくつかMoorer製品を持っていますが、どれも基本的に細身です。 ただ、ダウンの移動を防ぐためのキルティングが縦長に施されているため、余計にスリムな出来映えになっています。


■首回りのラビットファーは貴族の出で立ちを演出 首回りのファーはスナップベルトを締めると防寒性を著しく高めてくれます。

ラビットなので、そこまで高級感がある訳ではなありませんが、色が濃いめなので、そこはかとない気品を感じます(欧州人にはきっと受けるポイントだと思います)。 前立ての胸位置には折り返す見えるようにMoorerのロゴが配置れており、ブランドの主張も忘れてはいません。
■収納力には隙が全くありません 私がMoorerのアウターを好きな理由の一つがどのアイテムにも共有して言える収納力の高さです。 Morrisに限って言えば、前面にジッパー付きハンドウォーマーとフラップ付きポケットが合計4つ。内ポケットは向きを変える形で両サイドに1つづつと右裾にはボタン付きポケットの計3室。また左腕にもジッパー付きポケット(実用性は乏しいですが)があり、収納について困ることはありません。
裏地の素材はナイロンとポリアミドですが、ゴールドの色合いが非常に綺麗です。

胸のハンドウォーマーにジッパーがついているのですが、これが個人的にはお気に入りです。

前立てのジッパーとボタンを締めると内ポケットから物は出せないので、ここに財布とかを入れておくと誤落もないですし、非常に便利です。
インナーにジャケットを着るとそこにも収納が生まれますので、全て使用する訳ではないのですが、これだけ豊富に収納スペースがあると利便性は格段に上がります。
■防寒性能は日本では十分な高さ 左裾内側にMoorerお約束のダウンの品質保証表示と気温対応表が配されています。

いつもこれを見て思うのですが、数多くあるアウターブランドの中で、防寒性能に関するMoorerのポジションはそこまで高くありません。
これは、防寒性能を上げるためにダウンの量を増やしてスタイルを崩すことを嫌った結果だと思いますが、少なくとも日本国内(特に東京)では何の問題もありません。
北海道の極寒エリアではさすがに辛いかもしれませんが、国内在住の多くのMoorerファンは防寒性能について特に不満を持ってはいないでしょう。

対応している気温は、対応表を信じるのであればおそらく−20℃ですが、さすがにその気温であればこの量のダウンでは心もとない感じだと思います。
ちなみに中綿は、ギリギリまでダウンを増やしたダウン95%+フェザー5%という構成ですので、総量に対する保温性は相当に高いです。


付属品として、説明小冊子とスペアボタンが付いています。


この小冊子は英語やイタリア語以外に日本語での記載もあります。
Moorerとして、日本のマーケットを重視してくれているのはちょっと嬉しいですね(直営店があるくらいなので、当たり前と言えば当たり前ですが)。

東京でも最低気温が氷点下に落ちることがありますので、12月から2月まで大活躍してくれるアウターの4番打者間違いなしのアイテムです。

2018年12月7日金曜日

Y-3のジャケットはハッカーファッションの基本中の基本

『MR.ROBOT』というハッカーを主人公に据えた海外ドラマにはまっています。神経衰弱ハッカーが周囲を巻き込みながら、自分も大事件に巻き込まれていくという話です。 はまっている理由は至って簡単で、技術的な考証がかなりハイレベルだからです。ちらっと映るGUIやコマンドラインとかも全て実際のものを忠実に再現している点に感動しているためです。主人公が使っているOSがLinuxというのも、芸が細かいところですね。
シーズン4で終了してしまうようで非常に残念ですが、長々意味もなく続いてしまうよりもスパッとシーズン4くらいで終了してくれる方が気持ちいですね。 ハッカーのファッションというとモード系のものが多く、手持ちのワードローブの中にはあまり無いのですが、唯一「ハッカーっぽいかな」と感じるのは、Y-3です。
アディダスと山本耀司のコラボレーションによって生まれたブランドであるY-3(ワイスリー)。2018年で15周年を迎えるんですが、そんな長期間やっている感じは全くしなくて、常に最先端を走り続けているところが、スゴイです。 余談ですが、DCブランドが流行った頃に、Y's for Menの服だけは高校生の私には高価すぎて手が出ませんでした。大人になって少し経済的な余裕ができたことをきっかけに、Y’s(通称:ワイズ)とCOMME des GARCONS(通称:ギャルソン)の服を大人買いした経験があります。 言わば、山本耀司さんや川久保玲さんは憧れの人だったんですが、その山本さんがスポーツブランドとの異色コラボしているY-3が、ここまで長続きするとは思ってもいませんでした。 しかも、変にコラボ先であるアディダスに媚を売るようなことはしていません。Y-3はY's for Menをスポーティーにデフォルメしているだけで、あくまでも山本ワールドを保持しています。 Y-3については特別肩入れして購入している訳では無いので、それほど持っていませんが、衝動買いしたジャケットがこちらです。



このジャケットのお気に入りの点は、身幅が狭く腕丈が長い、そしてストレッチの効いた素材感です。 体にジャストフィットしていて動きやすく、淡色のボトムス&濃色(黒とか)のインナーと合わせると、相当にスタイリッシュな出で立ちが完成します。 勿論スリムなデニムと合わせても全然OKで、意外に幅広なコーディネートが可能です。

また、トップ以外の前立てボタンが比翼仕立てになっているのも芸が細かいですね。









































内ポケットが無いのと、腕の微妙な位置にY-3ロゴが入っているのが気になりますが、内ポケットが無いのはシルエットを崩さないためでしょうし、腕のこの位置だからジャケットにこのサイズでロゴが入っていてもそれほど気にならないのかなと考えると、まあ許容範囲かなと思います。
胸ポケットや右側のチェンジポケットはジッパー仕様になっていますが、あまりスペースが無いので装飾的な意味が強いと思います。




若干着丈が長いのもY-3の特徴で、シルエットを綺麗にまとめるためのデザインですね。
ジッパー仕様の袖も、ジャケットとしては他ではあまり見かけないデザインです。
ややedgeが効きすぎている感はありますが、レザージャケットっぽく仕上がっています。













































商品としてはスニーカーやバックパックが人気なようで、街でY-3のジャケットを着ている人に出会ったことは今のところありません。 他人との被りを気にする方には、うってつけのアイテムだと思います。

2018年12月2日日曜日

Dirk Bikkembergsのコートは超絶スタイリッシュな逸品

長年にわたってファッション業界を見ていると栄枯盛衰が激しいなぁと感じます。 昔好きだったブランドが好きではなくなって、いつの間にか無くなっていたりすると寂しい気分になります。 逆に昔好きだったブランドが未だに第一線で頑張っていると、頼もしくなります。 Dirk Bikkembergsもそんなブランドの1つです。 1989年のパリコレから表舞台でのキャリアを開始しているので来年で30周年です。 元々はメンズブランドだったんですが、後からレディースも展開し、現在では押しも押されぬ大ベテランになりつつあります。 傾向としては、ソリッドなデザインが中心(着る人を選びます)ですが、ミリタリーな要素やカラフルな展開を加えたりして、デザインの幅は底知れないものがあります。 Dirk Bikkembergsのアイテムは、それほど所有していないんですが、一番のお気に入りはスタンドカラーの中綿入りコートです。




■デザインとシルエットで勝負する Bikkembergsのアイテムは着る人を選びます。太っている人は基本的に着られません(勿論程度によります)。細身でモデル体型かそれに近い人しか着られません(違う人が着ても似合わない)。 自ずとマーケットは狭まるのですが、逆な言い方をすると、体型に気を遣った自制心のある人しか着てくれなくて結構と考えているのかも知れません。 このコートも「モデル向け」的な位置付けで、絞られた身幅と平均よりも長い腕丈にスタンドカラーが相まって相当エッジが効いています。 また、肩上部から袖先まで素材違いの切替しラインが入っていて、目を惹きます。


































ただ、それなりに幅があるラインなので悪目立ちすることはなく、肩章的なデザインでミリタリーっぽさを醸し出しつつ、長めに取られた腕全体的に細く見せる効果を発揮しています。 この辺りはBikkembergsの底力を感じる部分です。

おそらくデザインとしてのアクセントなのでしょうが、切り替えしの繋ぎ目にはスティッチが施されています。

































非常に美しいスティッチで手抜き感は全く感じません。
芸が細かいの一言では済まされないモノづくりに対するこだわりが響きます。

■スタンドカラーとロゴプレートでさり気なく主張
前立てのホックボタンを全て留めることは考えづらいですが、Bikkembergsとしてのセンスを強調するポイントになっています。

若干右側に被り気味のレイアウトがシンメトリー効果を出していて素晴らしいです。

二流のブランドだと、どこかに大きくブランドロゴを入れたりするところですが、Bikkembergsのやり方は以下の通りオシャレです。



判別できるかどうかくらいのサイズでシルバープレート(しかも頭文字だけのテキストのみ)を左ハンドウォーマー近くに配置しています。
更に感心させられるのは、Dの縦棒に極小で「Bikkembergs」と彫られている点です。
最早写真では全くわからないレベルですが、このシルバープレートを凝視されたことが何度もあるので、逆に注目されやすくなっていると言うわけです。
デカデカとブランドの宣伝をするものより、奥ゆかしく、主張をキッチリしている点は、神業レベルです。

ちなみに人から見られない裏地部分は、逆に死ぬほどブランドを押し出しています。



































着ている人に「お前はBikkembergsのコートを着ているんだぞ、間違っても太ったりするなよ!」と叱咤されてる気分にさせます。

■最低限の機能の中にもこだわりポイント満載 デザインを重視するあまり、コートとしての機能を過剰に省略しているケースをよく見ます(特にハイブランドに多い)。 勿論、海外セレブであれば0度近い寒さの中を歩くことは無いでしょうし、財布やら携帯やらを収納する必要も無いので、防寒具に機能を求めることは無いかも知れません。 ただ、私は一般人なので、そこそこ機能も求めています。 その点Bikkembergsは、一応機能にも配慮があります。 防寒性能は生地自体の防寒性が低いため、薄っすらと中綿を仕込んであります。厳冬期には厳しいかも知れませんが、東京の感覚で言うと、年間で最も寒い1ヶ月以外であれば十分な防寒性です。

また、随所に機能的なこだわりが詰まっており、前立てはジッパーとホックボタンの二重構造。


































そして、ハンドウォーマーには貴重品の誤落防止のため、ホックボタン付き。




































勿論、片側だけですが内ポケットも備えています。














々と書いて来ましたが、スタンドカラーでスタイリッシュ、しかも機能性も高いとなるとなかなかお目にかかりません。 長期間に渡って業界のトップランナーとして活躍し、サバイブしているデザイナーの鬼気迫る渾身の一作と言えるでしょう。
定価10万以上するコートですが、デザインや機能を考えるとその価値は十分あります。
個人的な趣味の世界ですが、ハンドウォーマーに手を突っ込むのではなく、意図的に黒のレザーグローブか何かとコーディネートして、一層エッジを効かせた雰囲気を醸し出したいアイテムです。


2018年11月27日火曜日

VANSON Model Bは定番を超えて、もはや革ジャンの原点

昔バイクに乗っていたこともあって革ジャンが好きで、ちょっとコレクター化しています。 さすがに会社に着ていくのは避けているので、着るとしたら週末のみです。時期的には10月下旬から3月下旬くらいの約5ヶ月間にしか着られないし、毎週レザージャケットと言う訳でもないので、数着ある革ジャンは1シーズンで5−6回しか着ない物もあります。 そんな中でも着用頻度が比較的高いのが、こちらのVANSON Model Bです。









































■定番ならではの安定したスタイル
スタンドカラーで無駄な装飾が無いModel Bは、スタイルとしては革ジャンの定番です。
バイカーたちが長年かけて培ってきたスタイルを形にしたものなので、目が慣れていると言うこともあり、街中で悪目立ちすることはありません。 最近では、デニムのみならずチノパンと合わせるコーディネートも一般化してきたので、着回しの幅も広がってきています。 特にVANSONの場合、バイカーの本場である米国の消費者に受け入れられているので流通量も多く、ENF同様に何度かのモデルチェンジを経て現在のスタイルを完成させている為、悪く言えば「平均的」、良く言えば「革ジャンの代名詞」的な位置付けになりつつあります。
■やはり肉厚なレザー VANSONのレザージャケットの特徴の1つですが、革が相当に肉厚です(そして硬い)。

若干シボを出しているのは堅牢性を高めるためでしょうか。 他のブランドでも時々ありますが、VANSONのジャケットは新品購入時には必ず立ちます。勿論、その硬さは徐々に無くなってきますが、革の厚みは無くならないので、着用時に若干の窮屈さは比較的長い期間感じることになります。ただ、その「窮屈感」を乗り越えて柔らかくなる頃には完全に自分のものになっていると言うのが、VANSONのレザージャケットの醍醐味でもあります。
部材としての革について言及すると1点だけ不満があります。背中に縦に入った接合部です。









立体的なシルエットを再現するために必要な裁断だったのかも知れませんが、縫製部分は少なければ少ないほど全体的に頑丈に仕上げるので、ちょっと不満です。

■スタンドカラーでジッパー多用の温故知新なデザイン
最近は襟付きのENFの方が人気があるようですが、スタンドカラーのModel Bもカッコイイです。
襟元に糸のほつれが発生していますが、通常使用によるものなので、「味」と言えなくもないですし。

 また起毛インナーでは潰されてしまう内ポケットも備えています。
この内ポケットは入り口がレザーで縁取りされていて見た目もカッコイイですが、結構深めなので使い勝手も良いです。

■実は微妙な部分もあります
ここまで、長所ばかり挙げてきましたが、なぜこんな仕様にしたのか?と疑問を感じるポイントがいくつか有ります。

まず、ジッパーのフックについている小さい輪っかがよく意味が分かりません。
 引っ張るには小さ過ぎるし(取れてしまいそうで怖い)、何かを通してkeepしておくような場所でもサイズでもありません。もうちょっと大きめのフックにして欲しいところです。


また、内側の縁に沿ってホックの受け穴がついているんですが、中綿に加えて起毛インナーも装着できるようにしてくれているのでしょうか。試したことはありませんが、もしインナーを装着したら当然ゴワゴワして着られない状態になります。この部分も改善の余地ありですね。
■防寒性能も比較的高め 前述の通り、他のモデル同様にModel Bも何度かモデルチェンジしているのですが、私が所有しているのは中綿入りのバージョンです(他のバージョンは起毛インナー(着脱可能)付きだったり、裏地のみだったりします)。
起毛インナーも悪くはないんですが、個人的には中綿入りの方が好みです。 防寒性の部分では起毛インナーか中綿か意見が別れると思いますが、ジャケット下に着るものを選ばないと言う点で中綿入りを選択したいところです。 寒さ対策のために、長袖シャツではないもっと厚めの何か(例えばパーカーとか)を着ようと思ったら、起毛インナーは毛とパーカー表面が引っかかって結構着づらいです。 中綿であれば引っかかりも無く、内側に着るものを選ばないので便利です。 中綿+内側に厚めのアイテムを着られる=防寒性能が高い、と言う理屈です。

ちなみに、中綿は袖口までカバーしています(起毛インナーは身頃部分のみ)。


































これで、レザーグローブを装着すれば、寒さ対策は万全に近いですね。


ハードなイメージが付いて回る黒の革ジャンですが、ボトムスにレザーパンツでも穿かない限りは、そこまでいかつい感じにはなりません。
インナーに着用するアイテムの柄や色合いによっては、むしろ柔らかいテイストも出せます。
ただ、レザートートバッグだけは革×革になってしまうからなのか、個人的には違和感があるため、避けるようにしています(完全に主観ですが・・・)。
秋冬には使い回しがしやすいので、何かと重宝しています。



2018年11月23日金曜日

Global Styleでパターンオーダーしてみた感想(その2)ミケランジェロ編

スーツをオーダーで作る際に、サイズ感以外で気をつけているのはスタイルです。 と言うのも、仮縫い付きのフルオーダーで作らない限り、メーカーによってスタイルに違いがあるためです。 ひどい会社だと、とんでもないおじさんスーツに仕上がったりします。 なので、どんな感じに仕上がるのか、特徴を見極めた上でオーダーするようにしています。 以前、Global Styleさんでオーダーした際に「細身が流行なんだろうけど、そこまで細くなくて、でもスタイリッシュっていう都合が良いモデルがあったら欲しい」と無理な注文をつけたところ、「ウチだったら、ミケランジェロっていう良いのがありますよー」と勧められて、ずっと気になっていました。
正式名称は、『ミケランジェロ・サルトリア』。
16世紀イタリアの天才ミケランジェロが作ったダビデ像(理想の男性像)みたいな体型の人が着るスーツと言う意味でしょうか・・・昔フィレンツェで見て想像以上の大きさに圧倒されたダビデ像を思い出しながらネットで詳細をチェックすると、シルエットもさることながら構造で勝負している感じ。1着作ったら話のネタに良いなと考えて、オーダーしてみました。
■いざオーダー作業 なるべく混雑している店舗は避けようと考えて、休日午前中に神田中央通り店に行ってみました。
神田といえばビジネス街=休日に人はいない、という安直な考えから選んだんですが、予想通りお客さんは私以外に一人だけ。 手が空いていた女性スタッフさんに、ミケランジェロに興味がある旨を伝えると、モデルの詳細を丁寧に説明してくれました。 ただ、まだ若いスタッフさんで、こちらがネット上で入手している以上の情報は余り持っていない・・・。採寸するわけでは無いので大丈夫かと考えて、「以前購入したことがあるので、そのデータを使ってください」と伝えると、「ミケランジェロは少し複雑なので、通常では測らない場所も必要なんです。なので、再度測らせていただきたいんですが・・・」と困り顔。 思わず「あなた測れるの!?」と聞き返しそうになりましたが、グッとこらえて笑顔で「じゃあお願いします!」と営業スマイルを返していました。 すったもんだしながら計測が終了して、生地選び。 いろいろオプションを付けて、ベストまで作ることにしたので、結構なお値段になっているだろうなぁと考えながらバンチブックで生地を選んでいると、どうしても高価なものに目が行ってしまいます。廉価なものはダサい柄のものばかり(Global Styleの欠点の1つです)。 知り合いから聞いた話ですが、格安にオーダースーツを販売している会社の多くは、生地メーカーが大手の百貨店などに卸した後の売れ残りの生地を安く仕入れているケースが多いので、どうしても安っぽい柄のものが多くなるようです(念のため書いておきますが、全ての生地メーカーのものがそうではありません。一部の生地メーカーのものは時期によって価格が大きく変動するので、価格が下がるシーズン後半に買い付けると、自然と選択肢の幅が少なくなる、というだけです)。 いくつか候補を選んでいると、ANGELICO(アンジェリコ)の良い感じのストライプものを発見したので、それに決めました。 ANGELICOは比較的若いメーカーで、紡績から染色まで全て自社工場でこなせるスーパーミルメーカーです。青の発色が美しい生地をたくさん生み出していて、光沢はそれほどありませんがSuper表示に関係なく手触りが良く使い勝手が良いイメージです。
ちなみに選んだ生地のsuper表示は100'sでした。












































約1ヶ月待って仕上がってきたのがこちらのスーツです。



デザイン的に結構大きなポイントがベストの肩から腋にかけてのカッティングです。
この状態で見ると、「ランニングシャツか!」と突っ込みたくなるのですが、立体的なデザインが施されているので、実際に着用すると、丸く抉られているラインがなぜかほぼ真っ直ぐに見えます。
パンツについても、極端なテーパード感はありませんが、履いてみると不思議と美脚なシルエットになります。
ちなみに裾は、18cmまで絞って貰いました。
■縫製には問題なし 国内の職人さんが一部機械を使って一部は手縫いで縫われているとのことで、縫製は非常に丁寧に仕上げられています。 見えない部分であるポケットの中やラペルの裏側、パンツ裾の折り返し部分などを中心に確認しましたが、粗雑な仕上がりは見受けられませんでした。
まずは裾周り、まあまあな感じの仕上がりです。少なくとも解れてしまうことはなさそう。
次にラペルスティッチですが、こちらも比較的キレイに仕上がっています。
そこまで彫りが深く見えないのは生地の問題ですね。ちなみにラペルに関しては手縫いで仕上げているそうです。


ジャケットのポケット周りもキレイに仕上がっています。

D管留め等は、オプションではありません。


切羽のボタンホールはキレイに仕上がっているのですが、裏地の縫い付けが若干雑な感じ。


襟裏の縫製も糸の飛び出しが数カ所あって若干雑に感じました。


■デザイナーさん渾身のスタイル はっきり言って絶妙なスタイルです。 全体のイメージについては、バランス的に上部に重心が置かれているため、本人の体型に関わらず美しい逆三角形が完成します(実際に痩せっぽちの私でも綺麗に肩幅を作れています)。 ジャケットは身幅に吸い付くように立体的な構造が完成しており、ベストについても、意図的に取られた脇下の余裕スペースによって腕周りの可動性を担保しつつスタイルを崩していません。 パンツの股上が浅すぎでは?とちょっと気になりましたが、下半身全体的に逆三角形の一部に取り込むためのデザインだと考えると、納得感があります(履きやすさを重視する方は1cm程度深めにしても良いかも)。

いつもパンツ裾を17.5〜18cm程度に絞るんですが、それも功を奏して程よいテーパード感が生まれています。 デザインもさることながら、構造的にも完成されていて、毛芯によってラペルの立ち上がりが良く、ラペル裾の立体的な広がり方も上品に仕上がっています。


トップループ方式のベルトループもオシャレです。

細身のスーツの場合、腰回りの可動域を確保するために必要な仕掛けです。


唯一の不満点としては、(私のオーダーミスなんですが)ブリティッシュなイメージを残すために、ベストの最上段ボタンの位置が若干低めに設定されている点です。

※特別に低いわけではなく、私の希望よりは低いという意味です。
あと1cmくらい高くても良かった。

ボタンの間隔が多少広くなっても、5cmくらい高い位置までベストが見えていた方が、ジャケットの前ボタンを閉めた際に、よりスタイリッシュに締まって見えたかも知れません。 ちなみにどこのオーダーショップでも、私のこの(ベストの最上段ボタンの位置を高くすると言う)オーダーには否定的です。
単純にボタンの数が決まっているので、前たてを長くする分だけボタンの感覚が空いてしまうことが否定的な理由なんですが、ボタンを1個足してでもなるべく前立てを長くした方が他の人との差別化が出来て良いんですけどね。

ブランドタグもグローバル・スタイルの他の商品とは違う特別なものが縫い付けられています。
■課題は価格か グローバルスタイルのHPでチェックする限り、5万円以下で作れると書いてありますが、ベスト(30%UP)を追加したり最低限のオプション(本切羽+台場+水牛ボタンなど)をつけると、結果として相当な価格になってしまいます。 ANEGELICO(ミドルクラスのイタリアンメーカー)でも総額で8万円(税込)を超えました。 もし、ゼニアやロロピアーナであれば12万くらいになってしまうと思われます。 フルオーダーであれば選択した生地に関わらず15万は超えるので、それに比べれば安価ですし、デザイン料や身体へのフィット感を考えると決して法外な価格ではありませんが、ちょっと勇気が必要な価格ですね。
パターンオーダー流行りなので、各社共に他社との差別化を図ろうと躍起になっています。
そんな中でこう言った形で自社特有のパターンと付随サービスを打ち出してセールスポイントにするのは、正攻法として十分成立しているなぁと感心します。
最終的な満足度は80点くらいです。