2018年11月23日金曜日

Global Styleでパターンオーダーしてみた感想(その2)ミケランジェロ編

スーツをオーダーで作る際に、サイズ感以外で気をつけているのはスタイルです。 と言うのも、仮縫い付きのフルオーダーで作らない限り、メーカーによってスタイルに違いがあるためです。 ひどい会社だと、とんでもないおじさんスーツに仕上がったりします。 なので、どんな感じに仕上がるのか、特徴を見極めた上でオーダーするようにしています。 以前、Global Styleさんでオーダーした際に「細身が流行なんだろうけど、そこまで細くなくて、でもスタイリッシュっていう都合が良いモデルがあったら欲しい」と無理な注文をつけたところ、「ウチだったら、ミケランジェロっていう良いのがありますよー」と勧められて、ずっと気になっていました。
正式名称は、『ミケランジェロ・サルトリア』。
16世紀イタリアの天才ミケランジェロが作ったダビデ像(理想の男性像)みたいな体型の人が着るスーツと言う意味でしょうか・・・昔フィレンツェで見て想像以上の大きさに圧倒されたダビデ像を思い出しながらネットで詳細をチェックすると、シルエットもさることながら構造で勝負している感じ。1着作ったら話のネタに良いなと考えて、オーダーしてみました。
■いざオーダー作業 なるべく混雑している店舗は避けようと考えて、休日午前中に神田中央通り店に行ってみました。
神田といえばビジネス街=休日に人はいない、という安直な考えから選んだんですが、予想通りお客さんは私以外に一人だけ。 手が空いていた女性スタッフさんに、ミケランジェロに興味がある旨を伝えると、モデルの詳細を丁寧に説明してくれました。 ただ、まだ若いスタッフさんで、こちらがネット上で入手している以上の情報は余り持っていない・・・。採寸するわけでは無いので大丈夫かと考えて、「以前購入したことがあるので、そのデータを使ってください」と伝えると、「ミケランジェロは少し複雑なので、通常では測らない場所も必要なんです。なので、再度測らせていただきたいんですが・・・」と困り顔。 思わず「あなた測れるの!?」と聞き返しそうになりましたが、グッとこらえて笑顔で「じゃあお願いします!」と営業スマイルを返していました。 すったもんだしながら計測が終了して、生地選び。 いろいろオプションを付けて、ベストまで作ることにしたので、結構なお値段になっているだろうなぁと考えながらバンチブックで生地を選んでいると、どうしても高価なものに目が行ってしまいます。廉価なものはダサい柄のものばかり(Global Styleの欠点の1つです)。 知り合いから聞いた話ですが、格安にオーダースーツを販売している会社の多くは、生地メーカーが大手の百貨店などに卸した後の売れ残りの生地を安く仕入れているケースが多いので、どうしても安っぽい柄のものが多くなるようです(念のため書いておきますが、全ての生地メーカーのものがそうではありません。一部の生地メーカーのものは時期によって価格が大きく変動するので、価格が下がるシーズン後半に買い付けると、自然と選択肢の幅が少なくなる、というだけです)。 いくつか候補を選んでいると、ANGELICO(アンジェリコ)の良い感じのストライプものを発見したので、それに決めました。 ANGELICOは比較的若いメーカーで、紡績から染色まで全て自社工場でこなせるスーパーミルメーカーです。青の発色が美しい生地をたくさん生み出していて、光沢はそれほどありませんがSuper表示に関係なく手触りが良く使い勝手が良いイメージです。
ちなみに選んだ生地のsuper表示は100'sでした。












































約1ヶ月待って仕上がってきたのがこちらのスーツです。



デザイン的に結構大きなポイントがベストの肩から腋にかけてのカッティングです。
この状態で見ると、「ランニングシャツか!」と突っ込みたくなるのですが、立体的なデザインが施されているので、実際に着用すると、丸く抉られているラインがなぜかほぼ真っ直ぐに見えます。
パンツについても、極端なテーパード感はありませんが、履いてみると不思議と美脚なシルエットになります。
ちなみに裾は、18cmまで絞って貰いました。
■縫製には問題なし 国内の職人さんが一部機械を使って一部は手縫いで縫われているとのことで、縫製は非常に丁寧に仕上げられています。 見えない部分であるポケットの中やラペルの裏側、パンツ裾の折り返し部分などを中心に確認しましたが、粗雑な仕上がりは見受けられませんでした。
まずは裾周り、まあまあな感じの仕上がりです。少なくとも解れてしまうことはなさそう。
次にラペルスティッチですが、こちらも比較的キレイに仕上がっています。
そこまで彫りが深く見えないのは生地の問題ですね。ちなみにラペルに関しては手縫いで仕上げているそうです。


ジャケットのポケット周りもキレイに仕上がっています。

D管留め等は、オプションではありません。


切羽のボタンホールはキレイに仕上がっているのですが、裏地の縫い付けが若干雑な感じ。


襟裏の縫製も糸の飛び出しが数カ所あって若干雑に感じました。


■デザイナーさん渾身のスタイル はっきり言って絶妙なスタイルです。 全体のイメージについては、バランス的に上部に重心が置かれているため、本人の体型に関わらず美しい逆三角形が完成します(実際に痩せっぽちの私でも綺麗に肩幅を作れています)。 ジャケットは身幅に吸い付くように立体的な構造が完成しており、ベストについても、意図的に取られた脇下の余裕スペースによって腕周りの可動性を担保しつつスタイルを崩していません。 パンツの股上が浅すぎでは?とちょっと気になりましたが、下半身全体的に逆三角形の一部に取り込むためのデザインだと考えると、納得感があります(履きやすさを重視する方は1cm程度深めにしても良いかも)。

いつもパンツ裾を17.5〜18cm程度に絞るんですが、それも功を奏して程よいテーパード感が生まれています。 デザインもさることながら、構造的にも完成されていて、毛芯によってラペルの立ち上がりが良く、ラペル裾の立体的な広がり方も上品に仕上がっています。


トップループ方式のベルトループもオシャレです。

細身のスーツの場合、腰回りの可動域を確保するために必要な仕掛けです。


唯一の不満点としては、(私のオーダーミスなんですが)ブリティッシュなイメージを残すために、ベストの最上段ボタンの位置が若干低めに設定されている点です。

※特別に低いわけではなく、私の希望よりは低いという意味です。
あと1cmくらい高くても良かった。

ボタンの間隔が多少広くなっても、5cmくらい高い位置までベストが見えていた方が、ジャケットの前ボタンを閉めた際に、よりスタイリッシュに締まって見えたかも知れません。 ちなみにどこのオーダーショップでも、私のこの(ベストの最上段ボタンの位置を高くすると言う)オーダーには否定的です。
単純にボタンの数が決まっているので、前たてを長くする分だけボタンの感覚が空いてしまうことが否定的な理由なんですが、ボタンを1個足してでもなるべく前立てを長くした方が他の人との差別化が出来て良いんですけどね。

ブランドタグもグローバル・スタイルの他の商品とは違う特別なものが縫い付けられています。
■課題は価格か グローバルスタイルのHPでチェックする限り、5万円以下で作れると書いてありますが、ベスト(30%UP)を追加したり最低限のオプション(本切羽+台場+水牛ボタンなど)をつけると、結果として相当な価格になってしまいます。 ANEGELICO(ミドルクラスのイタリアンメーカー)でも総額で8万円(税込)を超えました。 もし、ゼニアやロロピアーナであれば12万くらいになってしまうと思われます。 フルオーダーであれば選択した生地に関わらず15万は超えるので、それに比べれば安価ですし、デザイン料や身体へのフィット感を考えると決して法外な価格ではありませんが、ちょっと勇気が必要な価格ですね。
パターンオーダー流行りなので、各社共に他社との差別化を図ろうと躍起になっています。
そんな中でこう言った形で自社特有のパターンと付随サービスを打ち出してセールスポイントにするのは、正攻法として十分成立しているなぁと感心します。
最終的な満足度は80点くらいです。

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